• 今時、危険で非効率的な作業を人が?現場を助けたくて、開発に着手。

日本全国、それこそ星の数ほどあるスーパーや小売店の食肉コーナー。そこには、牛・豚・鶏やその他の食肉が、部位ごとに用途別の大きさ・厚みにカット・パック詰めされ、整然と並んでいます。その中のひとつ、すき焼き・しゃぶしゃぶをはじめ様々な料理に使われる薄切り肉は、幅も長さもあるため、折り畳まれてパック詰めされています。
どんどんと機械化が進んでいる昨今ですが、少し前まで、このパック詰めは一部手作業で行われていました。「丸刃スライサー」という機械で塊肉を薄くスライスし、取り出し口から人が一枚ずつ手で受け取り、畳んでパックに入れていたのです。
丸刃スライサーは、周囲が全部刃になっている円盤が高速回転する機械です。むき出しの刃のすぐそばに手を持っていかなければならない作業は、熟練を要する大変危険なものでした。実際、作業中の事故も多かったといいます。
――今時、このような危険な作業が許されるのか。これこそ、機械がやるべき工程なのではないか。
その思いが、自社独自のスライサー・「マルハレス」シリーズの開発のきっかけ
でした。

  • やってみて初めてわかったこと。そうか、だから今までなかったのか。

当初の私たちは、既存の他社製食肉スライサーに装着することを前提とした、スライス肉の折り曲げ装置を開発するつもりでした。スライスされた肉をコンベアで送り出し、受け取って折り曲げるという構造の機械です。
しかし、すぐに困難に直面しました。薄くスライスされた肉は、濡れたティッシュペーパーのように、刃や周りの部品にくっついてしまいます。そのため、スライスされた肉がうまく出てこなかったり、出てきても一定の位置に一定の形で出てこなかったりしました。機械は、臨機応変に対応できる人間とは違って、プログラムされた動きしかできません。これでは、安定して折り曲げ作業を行う機械は実現不可能です。いくら試行錯誤しても問題を解決できず、開発は諦めざるを得ないかに思われました。

  • 従来のものでは実現不可能?だったら、新しいものを造ればいい。

そんなときのことです。当時社長を務めていた仲野整は、アメリカでハムやソーセージを切るのに「バンドナイフ」が使われていることを知りました。バンドナイフとは、帯状になっている刃を輪にしたものです。仲野は「これだ!」と直感しました。従来の丸刃スライサーでは肉と刃の接触面が大きかったために苦労しましたが、バンドナイフだと接触面積を小さくできます。これを使って、スライスするところから自社の機械でやってしまえば、頭を悩ませていたいろいろな問題が解決するかもしれない。かくして、バンドナイフを備えたスライサーの開発が始まりました。

  • 次々に立ちはだかる困難の壁。理想は幻と消えてしまうのか?

しかし、アメリカで使われていたバンドナイフは硬い肉を切るためのものだったため、冷凍されていない柔らかい生肉を切るのには適していませんでした。また、回転させるための滑車からバンドナイフがすぐに外れたり、高速回転させると刃が焼き付いたり……。通常の機械の開発には2〜3年ほどかかりますが、刃の焼き付きの解消だけで3年もかかりました。
そのほかにも、投入する材料の重さや形状に関わらず、安定して塊肉を保持して一定の厚みにスライスできること。連続して大量の肉をスライスできること。粘着性のあるスライス肉がくっつかないように、スライスや送り出し、折り畳みの際に、なるべく機械との接触面が少なくなること。解決すべき課題は山積みでした。
時間だけが過ぎ、いつまで経っても商品化できない幻のスライサーに、社内からは「これだけ時間やお金をかけても開発できないのだから、実現不可能では? 開発はやめるべきだ」との声が相次ぎました。それでも、「理想のスライサーは必ず実現する!」との強い思いを胸に、アイディアを出し合い試行錯誤を重ねて、歯を食いしばって開発を続けました。

  • そうしてできた世界初の新製品。時代の流れは、それほど甘くなかった。

開発を始めてから約10年。決して妥協を許さず、ベストを追い求め続けた努力が、ようやく報われる時が来ました。当社の理想を具現化したスライサーは、「ベンディングスライサー A to Z」と名付けられました。柔らかい肉を安定して美しくスライスし、そのまま折り畳みまでできてしまうような機械は世界でどこにもない。これは絶対に売れるはず。そう確信を持って売り出したA to Zでしたが、またも苦難が待ち受けていました。
そもそも開発に着手したときは、バブル期の高揚感がまだ残っていました。人件費の高騰と人手不足に喘いでいた食肉加工現場では、これを解決するための革新的な機械が切に待ち望まれていました。だからこそ当社も、お客様に喜んでもらいたい一心で、幾多の苦労を重ねながら開発を続けてきたのです。しかし製品が日の目を見たとき、時代はバブル崩壊後。食品加工業界は、多額の設備投資には慎重になっていました。A to Zの価格は、既存スライサーの5倍以上。短期間の試用ではなかなか良さを理解してもらえず、価格が大きなネックとなり、思っていたようには売れませんでした。

  • 理想の製品は必ず受け入れられる。信念を持って、変わらず歩み続ける。

それでも粘り強くいろいろな企業や現場を回り、A to Z導入のメリットをご説明したり実際に使ってみていただいたりと、地道に営業活動を続けました。すると徐々に、人件費の削減や廃棄ロスの削減、作業時間の短縮に役立つほか、高い安全性、初心者でも扱える操作の容易さなど、利益の増加に直結するA to Zの良さが認められ始めました。そして全国への広がりとともに、販売代理店や顧客の方々から「もっとこうしてほしい」「うちではこんな機能を付けたい」といったご要望をいただき、新製品や改良品の製造につながりました。
今では、当社の中でも圧倒的に高い売上を誇るスライサー。業界に“スライス革命”を巻き起こして様々なメディアで取り上げられたほか、文部科学省や経済産業省、発明協会、松山商工会議所から賞をいただきました。
しかし、当社は現状で満足しているわけではありません。確かに新製品の開発は、先の見えない投資を余儀なくされ、ゴールはおろか、今歩いている道が正しいのかどうかさえも分からない中、歩み続ける勇気を必要とされます。それでも私たちは、「必ず理想は実現する」という揺るがない信念を持ち、持てる技術を余すところなく投入。「ベター」ではなく「ベスト」を追求。今後もこの姿勢を変えることなく、時代を変える製品を生み出していきます。

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